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今の生活を捨てても、長年の夢に挑戦すべきかどうか迷っています

電子機器メーカーに勤務して16年になるのですが、私には、幼い頃から、学校の教師になることへの憧れがありました。この数年、息子の勉強を見てやるようになり、また、最近の子どもたちの様子を聞く中で、教育への想いはやはりあきらめられないと感じるようになりました。できれば独立し、学習塾を開業する夢に賭けてみたいのですが、今の安定した生活は捨てなければならず、迷っています。

38歳男性・会社員

「3つの問い」によって、自分の「人生の仕事」を具体的に描き、見定めてゆく

高橋佳子先生
『いま一番解決したいこと』より一部抜粋・要約

安定した生活を手放した上に、学習塾を開業して、もしうまくいかなかったらどうしよう……。今、あなたが迷っていらっしゃるのは、ただそのような生活上の問題だけではないと思います。あなたはきっと、学習塾を開業するということが、自分が本当にやるべき仕事なのかどうか、その確信を得たいという気持ちもあるのではないでしょうか。

人生の半ばで転職に迷う方の多くが、同じように生活の不安のことだけでなく、一体何が、生涯を賭けるべき本当の仕事なのかということに悩んでいるというのが現状でしょう。それは、自分の使命は何かという問題でもあります。

人間は、誰もが、その人にしか果たすことのできないかけがえのない使命をその魂の内に抱いています。そして、その使命は「人生の仕事」と言うべきものと結びついています。つまり、誰にも使命につながる、その生涯を賭けるにふさわしい「人生の仕事」があるということです。

しかし、その人生の仕事や使命は、外から誰かによって「これだ」と示されるわけではありません。人生の歩みを重ね、様々な出会いや出来事を経験する中で手探りしながら自分で目覚めてゆくしかないものです。


……「生きること」と「求めること」が同時の人生を人は歩む。生きることと自らの使命を探し求めることが同時進行にならざるを得ないのです。つまり、誰にとっても、使命を見出すことはたやすいことではないということです。

あなたの魂の内にも、大切な使命が秘められています。今、それが疼きとなって、あなたを「人生の仕事」に誘おうとしているのではないでしょうか。


私の「人生の仕事」とは何なのか。学習塾を開業することが、「人生の仕事」なのかどうか――。それがあなたにとって隠れたテーマでしょう。そのことを考えるときに、大切にしていただきたいまなざし――。それは、「人生の仕事」とは決して特定の職業という形に限定されるものではないということです。

例えば、「癒やし」を願いとして魂に刻んで生まれてきた人は、人生を歩む中で「癒やす」という「はたらき」に心が惹かれてゆきます。「癒やす」職業と言えば、社会では、医師、看護師、理学療法士といった職業と多くの人は考えるでしょう。しかし、ときには建築家やインテリアデザイナーであっても「癒やしの空間をつくる」という形で人々に癒やしをもたらすこともできます。芸術家として、作品を通して人の心を癒やすこともできるでしょう。つまり、「人生の仕事」とは「職業」ではなく、「魂のはたらき」であると考えるべきなのではないでしょうか。

あなたの場合も、あなたが果たしたいと願っている「はたらき」とは何なのかを見つめてゆく必要があるのではないでしょうか。そして、その「はたらき」を果たすために、学習塾の経営という「職業」が、今、最もふさわしい条件なのかどうかも丹念に点検する必要があると思うのです。

もし、あなたの魂の内に刻まれている願いが「人を育む」ということであるとすれば、必ずしも塾の教師という職業でなくてもその願いは果たせます。会社の新人研修を担当しても人を育む「はたらき」は果たすことができるかもしれません。自分が預かった部下たちを育んでゆくという形もあるかもしれません。自分自身が果たしたいと願っている「はたらき」について、じっくりと考えてみてはいかがでしょうか。何よりも、魂の内に刻まれている願いの中心を自分自身で確かめてゆくことが大切なのです。


あなたが、あなたの「人生の仕事」を見出すためにここで3つの問いを通じて願うべき現実の形を掴む方法をお伝えしたいと思います。

まず、第1の問いは、「私は何を果たしたいのか、何を願っているのか」という問いです。 今、あなたが抱えている様々なしがらみや、これまでの歩みの経緯を一度、一切横に置いて、とらわれやこだわりのない自由な心で、「建前」でも「本音」でもない率直な「本心」を問い、その願いを書き出し、意識化してみてください。

人間の心は、本来、極めて広大で自由なものです。無限に広がる大宇宙のことをも想うことができます。しかし、私たちはいつの間にか、未来をこれまでの人生のいきさつやしがらみの延長線上にしか想い描くことができなくなってしまっています。まずここでは、そうした過去に縛られることのない、自由な心の声に耳を傾ける時間を持つことが重要なのです。

次に第2の問いです。第1の問いで意識化された願いについて、さらにこう問いかけてみましょう。「では、なぜ、それは他の人ではなく私でなければならないのか」と。今までの人生で、あなたが深めてきた問題意識や蓄えてきた知識、育んできた能力や人縁など、第1の問いで意識化された願いとのつながりの必然性に注目してゆくのです。

そして、第3の問いは「世界の側は今何を望んでいるのか」という問いです。あなたの場合なら、今、世界はどのような人が育まれることを求めているのかということでしょう。対象となる子どもたち、あるいは若者たち、若い世代が望んでいることであり、親御さんたち、親の世代の方たちは何を望んでいて、社会はどのような人々が育成されることを望んでいるのかということです。

第1、第2の問いは、あなたに関するものであるのに対して、第3の問いは世界に関するものです。それを問いかけていただきたいのは、あなたの本当の願い、「人生の仕事」は、あなたが生きている時代や社会、そしてあなたが抱いている様々な関わりと切り離すことができないものだからです。あなたがこの時代に、日本という国に生まれてきたことには、必ず意味があります。あなたの「人生の仕事」はこの時、この場だからできることとつながっている――。そのことを考えてみてください。

ぜひ、これらの問いに応えながら、心の声と世界からの呼びかけに耳を澄ましてみる時間をつくってみてください。その取り組みを通じて、心の中に確信されてくるものがきっとあることと思います。そこに、「人生の仕事」に向かってあなたが踏み出すべき次の1歩が指し示されるはずです。

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