毎日同じことを繰り返す主婦の自分に、意味を見出せず、虚しさを感じてしまいます

今、感じている「虚しさ」は、本当の自分を探し、求めてゆくことを呼びかけていると受けとめる。そして、主婦のはたらきが持つ創造性や意義を知ること

高橋佳子先生
『いま一番解決したいこと』より一部抜粋・要約

ささやかな幸せに満ちていたとしても、とりたてて誰かが誉めてくれるわけでも、認めてくれるわけでもない。毎日が消えてゆくような時間の中でいつの間にか年齢を重ねてゆく自分が、ふと惨めで寂しくなる。かと言って、今さら何かを始める自信もゆとりもない。テレビや雑誌からは社会で華々しく活躍している同世代の女性の姿も飛び込んでくる。「私には家族があるから」と自分に言い聞かせようとしても、一体私の人生は何だったのかと満たされない想いが募る――。 こうした気持ちは、あなただけではなく、多くの主婦の方の実感ではないでしょうか。ましてや、自己実現を果たそうと社会で懸命に仕事に打ち込んできた体験がある方の場合はなおさらです。いつも同じことの繰り返しで、ただ消えてゆくだけに見える主婦の時間は無駄にしか思えないのでしょう。 あなたの場合も、かつて働いていらっしゃった頃に比べ、進歩がない日々に「充実感」が持てないこと、その延長線上に未来が開けないように感じておられることが相まってのご質問なのですね。ならば、まず今あなたが感じているその「虚しさ」をこそ手がかりにしていただきたいと思います。

なぜなら、今の自分に意味が見出せない苛立ちとは、あなたの中に眠っていた新しいあなたからの「呼びかけ」かもしれないからです。

あなたはようやく自分の時間を持てるようになってこられたわけですね。ですから、その中で、自分が自分として輝いて生きる道を探すことができるし、そのために時間を使うこともできるということでしょう。友人や知人と楽しく時間を過ごすこともできるし、自分の関心を深めてゆくこともできる――。自分探しの旅に改めて出発しようとしているのが、今のあなたであると言えるかもしれません。 心していただきたいのは、本当のあなた自身を探す旅はずっと続いてゆくということです。無気力の中に埋没して自分を知る努力をあきらめることも、グルメや趣味にと、ただ何とない刺激を求め、幻想の充実感に満足して本当の自分と出会うことなく終わることも、同じように心の牢獄に閉じ込められていることには変わりはありません。いずれにしても「自分が自分になれない苦しみ」を味わうことになるからです。

あなたはかけがえのないオンリーワンの存在で、この世界にあなたに成り替われる存在は誰もいません。あなたは自ら、その真実に応え、生きる意味を証すことができるのです。そのことは、決して忘れないでいただきたいのです。「本当の自分はどこにあるのか」 「なぜ、なぜ、なぜ……」と問うことを、決して忘れないでください。

あなたがおっしゃる通り、家庭の主婦が毎日の時間を注いでいる家事の多くは、来る日も来る日も同じことを繰り返さなければならないことです。また、繰り返して初めて家庭生活が安定して支えられるという事実もあるでしょう。

私は、この繰り返しがもたらす安定に、実は大きな意味があると感じています。それは人間の創造的な営みに深く関わっていると思うからです。人間の成長は実は、家庭の安定の中で大きく促進されることが知られています。例えば、学力の伸長も家庭環境の安定が大きな要因になっていることが、人間の能力研究の成果として確認されています。いつも家に帰るとお母さんが待っていてくれる。だんらんがあって、そこに自分の居場所が確かにある……。目標に向かって十分に努力できるのも、そんな土台があるからです。そこから、人間の本当の創造的な能力が引き出されてくるのです。

そのはたらきは、目立たないかもしれませんが、大地のように家族を支えているものです。家族が互いの存在を想い、その絆を確かにする土台であるということでしょう。ですから、家事は家事のためだけにあるのではなく、その時間を通じて、家族が1つに結びつき、家族1人ひとりの人間としての力と可能性を引き出すために存在していることを、あなたにもわかっていただきたいのです。

あなたが人生の新しい1歩を踏み出し、人間としてさらに豊かな包容力を蓄えられることを祈っています。