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なぜか会社の人間関係がうまくいきません

私が部長を務めている勤務先の経営状況はここ数年悪化の一途を辿っています。いずれ取り返しがつかなくなるのは明らかなのに、誰も危機感を持っていません。私なりに様々な改善案をつくり、社長や部長仲間に投げかけてみるのですが、皆、なかなか協力してくれません。逆に人間関係がぎくしゃくし、正直なところまいっています。

40歳男性・会社員

会社で生じている問題と自分自身を切り離さず、1つに結ぶ。そして、今できることに取り組み、問題の主導権を自分が握るところから始める

高橋佳子先生
『いま一番解決したいこと』より一部抜粋・要約

1つの現実に対する感じ方、対応の仕方というものは、人によって様々です。あなたが心配している会社の業績に対して、他の人がとても心配しているとは思えないということも、その違いかもしれません。しかし、会社の業績が芳しくないことは、明らかな事実であり、社内の皆さんもおそらく承知のこと。多くの方がその経営状態に翳(かげ)りがあることを感じながら、あなたがおっしゃるように、全社一丸となっての問題意識にはなっていないのでしょう。そんな状況に、あなたは一層、危機感を募らせて、その想いを周囲の方々にぶつけておられるのですね。

会社の行く末をわがことのように案じる責任感。筋道立てて問題点の所在を見極めてゆく分析力。あなたのそうした力は、きっと周囲の方々も理解していらっしゃることと思います。
しかし、その想いはすれ違うように受けとめられず、むしろ、マイナスにさえなっているように感じる。一体どういうことなのか――。理不尽な気持ちも感じておられると思いますが、もし本当にあなたが会社のことを何とかしたいのなら、ここで、いつもとは違った考え方を試みる必要があると思うのです。


何か問題があると、自分の失敗が明白ではない限り、その原因を外に見ようとするのが人の常です。「ここが悪い」「あの人が問題」。そうやって問題を外に見て、批判し追求してしまう。

しかしそのやり方はうまくいっていない――。

ですから、私がここであなたにお勧めしたいのは、それとはまったく異なるアプローチなのです。そのポイントは、今生じている問題と自分自身を切り離さず、1つに結ぶということです。自分がその責任を引き受ける。つまり、その問題をまずは自分自身に吸い込んでみる。そのとき事態の見え方は大きく変わるでしょう。その上で、自分自身がこの事態に対してできることは何かと考え、そのことに全力で取り組むことです。 あなたの会社の例で言えば、あなたはこれまで、会社が陥っている状況の原因を、「みんなはわかってない」と、自分の外、つまり社長や仲間、業界の状況などに見ておられました。しかしそうではなく、問題の原因を自分に見出すこともできるということです。「会社の危機的な状態について、自分はそれを十分感じているのだから、それを理解してほしい人たちにもっと智慧深く伝えることができたはずではないか」「もっと皆の気持ちを聞かせてもらい、協力してもらえるように働きかけることができたはずだ。それを十全にしてこなかった自分にも責任の一端がある」と考える――。

そんな考え方は理不尽だと思われるかもしれません。自分以上に会社の問題を心配してきた者はいないのだから、どうして自分がその原因を引き受けなければならないのか、と。でも、他人のせいにした途端に、私たちはその問題をどうすることもできなくなります。その問題の主導権を握っているのは他人になってしまうからです。


問題の原因を自分に見るということは、自分にできることがあるということ。自分が変われば事態が変わる。それが自分自身の本当の主導権を行使することであると私は思うのです。そのポイントは、自分の主導権の外にある事柄については横に置いて、主導権の中にある自分自身のあり方、自分の関わり方を徹底的に変革することを第一にするということです。

私たちは、私たちが抱える問題に対して無力なのではありません。すべきこと、できることがまだ残っています。それは、まず、私たち自身が変わることから始まってゆきます。「私にできることは何か」、この問いかけを続けて、あなたにも新しい未来をつくっていただきたいと思います。

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