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障害を持つ子どもの未来が心配です

生まれて間もなく、息子が脳性麻痺の障害を抱えていることを医師から告げられました。「初めての赤ちゃんであんなに喜んでいたのに。あんなにかわいい大切なわが子なのに……。どうして……」と、一瞬、私は信じられませんでした。とめどなく涙があふれてきました。子どもの将来のことを思うと不憫(ふびん)でなりません。また親として何ができるのかと考えると、不安で仕方ありません。

35歳女性・主婦

果たしたい願いがあって生まれてきた魂と信じて、関わっていただきたいのです

高橋佳子先生
『いま一番解決したいこと』より一部抜粋・要約

医師から、息子さんの障害のことを告げられたとき、それはあなたがおっしゃるように、 言葉に表しようのないショックだったに違いありません。「どうしてこの子が……。せっかく生まれてきて、あんなにかわいいのに、一体なぜ……」と、どうにもやり切れない想いに襲われたのではないでしょうか。

そして、「子どもがこんな目に遭うのは、親が悪いわけでも子どもが悪いわけでもない。……神も仏もあるものか」と、やり場のない憤(いきどお)りを抑えることができなかったかもしれません。あるいは、これから後に訪れる様々な試練のことを心に思い描いて、「もう終わりだ。どう考えても未来はない。これが運命なのか」……と運命を呪(のろ)うような気持ち、あるいは、「まだまだ子育ての体験もないのに、具体的にこれからどうしたらいいのか。果たして自分にできるだろうか」と不安な想いも募るでしょう。

そんな次々に湧き上がる想いにどうにも押し潰されそうになったら、このことだけを心に問いかけてください。

守りたいことは一体何なのか――。あなたの心の中心にある1番大切にしたいこと――それは言うまでもなく、息子さんの生命であり、人生のはずです。生まれたばかりの息子さんが健やかに成長し、幸多き人生であるように、と切ないほどに願っていたからこそ、あなたはこれほど苦しんだのです。あなたが感じた衝撃、不安、恐れの原点には、常に息子さんへの限りない「愛」があるということを絶対に忘れないでください。そしてまずその一点に、心の中心を定めましょう。


思い出してください。生まれたばかりの息子さんの無垢な素顔に初めて接したときのこと。すべてを投げ出して、自分1人では生きることができない無力な存在として生まれ落ちた赤ちゃんを目にしたとき、あなたはもう抱きしめずにはいられなかったでしょう。この子のためなら自分のすべてをなげうってもいいとさえ思えたかもしれません。出産までのいろいろな苦労もすべて消え失せてしまい、これまで体験したことのない至福に満たされた瞬間だったのではないでしょうか。

「親になる」とは、自分以外の存在のために生きる自分になるということ。それはもう人間の魂の中に遺伝子として組み込まれている約束のようなものです。そしてだからこそ、子どもたちはみな、まったく無力な存在として生まれてくるのではないでしょうか。

今こそあなたは今までのあなたを超えて「親の魂」となる一歩を踏み出すとき。愛を生きる存在として生まれ変わることを促されているということを、ぜひ大切に受けとめていただきたいのです。


そして、これからの長い人生を「障害」という条件を引き受けて歩んでゆくのは、ほかならぬあなたのお子さんです。息子さんが、この条件を引き受けてどう生きるかが、常にこの現実の中心にあります。そしてそれを見守り、支えるのが「親の魂」でしょう。

そのことを考えるときに、ぜひ大切にしていただきたい人間観があります。それは、人間は、どうしても果たしたい願いがあって、この世界に自ら望んで生まれてきた存在であるというものです。たとえどんな条件を背負おうとも、否、その条件を引き受けたからこそ果たすことができる使命と願いを、誰もが抱いているということです。それは等しく、誰にも与えられている人間の尊厳というべきものです。そして、その願いを果たすために必要な魂の力を、すでに与えられているのです。

適切な水分と養分、それに太陽の光が与えられれば、一粒の種から見事な花が開くように、人間の内に宿る魂の力が引き出され、その願いを果たすことができるかどうかに決定的とも言える影響を与えるのは、親御さんであり、環境となる1人ひとりです。種である魂の内にどんな可能性が眠っているのかは、今はまだわからないかもしれません。でも、「信じて関わること」はできるはずです。「この子は、障害という条件を引き受けても、どうしても果たしたい願いがあって生まれてきた魂なのだ」と心底信じて、関わってさし上げていただきたいのです。

三重苦という障害を背負いながらも、ヘレン・ケラー(1880〜1968)にはサリヴァン女史(1866〜1936)という同伴者がいつも傍らにいて愛情を注いで関わったからこそ、多くの人々に希望の光を灯したヘレンになることができたのです。そうやって子どもさんに関わる中で、あなたの中からもきっと愛が引き出され、「親の魂」となる道が開かれてゆくと信じています。子どもが生まれたら「親」になるのではなく、親もまた、子どもと共に成長し、「親に成ってゆくのだ」ということを忘れないでいただきたいのです。

あなたと同じように障害のあるお子さんを持つ男性が、十数年の歳月を経て、「あの子は、神様からの贈り物です。私に人を愛することと信じることを教えてくれました。どんな障害があっても、あの子の中には仏性(ぶっしょう)があることを信ずること。それをあの子は教えてくれたのです」としみじみと私に語ってくださったことがありました。あなたと息子さんとの間にも、そんな未来が待っていることを心から祈念しています。

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