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婚約者とこのまま結婚をしてもいいのでしょうか?

3年間つき合った彼からのプロポーズを受け入れたのですが、結婚式の日取りが近づいてくるにつれて不安が大きくなっています。「本当にこの人と結婚していいのかしら……」という想いが消えないのです。彼のことは好きですし、彼も私のことを大切にしてくれています。でも、本当にこの人でいいのかどうか、自信が持てません。母や友だちは、「結婚前は、誰もがそんなふうに考えたりするものよ。あまり思い詰めないで」と言ってくれるのですが、自分でもどうしたらいいのかわからなくなってしまっています。  

27歳女性・会社員

結婚はスタートであってゴールではありません

高橋佳子先生
『いま一番解決したいこと』より一部抜粋・要約

女性にとっても、男性にとっても、生涯の伴侶を選ぶことは、人生において大きな選択です。あなたは今、これからの人生を一緒に築いてゆくパートナーを選ぶことを通じて、互いの人生に深く関わり、その人生を大きく左右しようとしている――。それぞれまったく異なる条件を背負って人生を歩んできた2人の魂が今、互いの違いを引き受けて新たな1つの現実を築いてゆくのです。それだけの大きな選択の前で不安になることは、決して珍しいことではありません。むしろ不安を感じることの方が自然だと思います。

そしてだからこそ、今あなたが抱いている不安や躊躇(ちゅうちょ)の想いも、結論を出し急ぐ前に大切に見つめてみる必要があると思います。

あなたの不安や躊躇は一体どこからやってくるものなのでしょう。彼の人柄や性格への心配ですか。学歴、職業、年収、将来性に物足りなさを感じていらっしゃるのでしょうか。あるいは、彼の人生観や職業観、結婚観、家庭観などがどこかあなたとの溝を感じさせて違和感を覚えていらっしゃるのでしょうか。それとも、彼の両親や親族の方々になじめそうもなくて、「本当にこの人たちとうまくやってゆけるのかしら……。とても自信がない」と思っているのでしょうか。

何よりもまず、あなた自身が抱いた漠とした不安や気になる躊躇が具体的にどのようなものであるのかを見つめることが大切です。そして次に、どこにその根があるのかを掴んでみましょう。頭の中で考えるだけではなく、紙の上に書き出すなどして、目で見てわかる形にして確かめてみてはいかがでしょうか。

その上で、それらはあなたのこれからの人生にとって、果たして決定的に重要なことなのか、それともそうではないのか、あなた自身の心に問いかけてみることだと思うのです。その中で自ずと結論が出てくることもあるのではないでしょうか。


実のところ、あなたに1番ぴったりするのは、「この人は本当に運命の人なのか」という気持ちなのかもしれませんね。昔から運命の人とは見えない赤い糸で結ばれていると言われてきました。「この人が本当にその人なのか、約束の人なのか」とどうしても考えてしまう。「彼のことは好きなんだけど、もしこの人と結婚して、その後で本当の運命の人が現れたら……」という心許(こころもと)なさ――。

もしあなたがそんな不安を抱いていらっしゃるとしたら、私はまずこうお伝えしなければならないと思うのです。

――結婚はスタートであってゴールではありません。本当に運命の人かどうかは、2人がこれからの人生の中で証明してゆくことです――。

どんなに恵まれた条件での結婚であっても、それで未来のすべてが決まってしまうことはありません。結婚は絶対的な保証にはならないし、決定的な幸福を約束するものでもありません。これからすべてが始まるのです。そして、その未来は、これまでの彼との月日の中にすでに映し出されているのではないでしょうか。


今、あなたは新しい人生の季節を歩み出そうとしているのです。確かなことは、これまで、それぞれの人生の道を歩んできた2人が1つの家族をつくり、結婚生活という共同の時間の中で1つの道を開いてゆくということです。

ですから2人に必要なのは、人生を共有し合う感覚、そのための信頼感――。そして、その覚悟があるかどうかということではないでしょうか。それは、当たり前のことのように思えるかもしれませんが、実際は多くの場合において必ずしも確かめられていないことのように思えます。

結婚生活を営むためには、互いに惹かれているという想いだけでは十分とは言えません。 人間としての信頼感や互いを尊重する気持ちがどうしても必要なのです。

なぜなら人生には試練がつきものだからです。よいときばかりではない、その忍従(にんじゅう)の時を一緒に耐える気持ちを持てるかどうか。互いにその信頼が感じられるならば、新たな運命を2人でつくり出してゆくことができるのではないでしょうか。

夫婦の間でも、いつも完全な理解ができるわけではないでしょう。よく知っているつもりでも、その人のすべてを把握することなど誰にもできないことです。良いところと足りないところ、人生観や職業観、結婚観、家庭観といったことだけではなく、互いのこれまでの人生の足跡、喜びと悲しみ、後悔と願い……。1人ひとりの存在には簡単には計り知れない深層が孕(はら)まれているものです。そのことを大切に受けとめることができるでしょうか。そして、相手の様々な側面もよく知ったうえでなお人生を共に歩んでゆきたいと思えるかどうか、そのことに心が深くうなずいているかどうかを確かめていただきたいと思うのです。

それは、今の充実だけでなく、結婚して夫婦となり、子どもが生まれて家族をつくり、そして一緒に生活して年齢を重ねてゆく……。そんな未来の姿を希望や喜びをもって具体的にイメージできるかどうかということでもあるのです。


ほかの誰でもない、あなた自身の大切な人生です。だからこそ、あなたの素直な気持ち、あるがままの気持ちを確かめるところから始めていただきたいと思います。

最後に、今、結婚という人生の選択を前にして不安や躊躇を抱え、思い悩んでいるあなたに、私は、この言葉を贈らせていただきたいと思います。

「2人の契(ちぎ)りが魂の約束かどうか、それは
外から、誰かによって証されるのではありません。
証は2人によってなされます。
苦しいときも、つらいときも
いつどんなときにも
2人で共に歩いてゆくこと。
2人で共に背負ってゆくこと。
2人で共に支え合ってゆくこと。
2人で共に生きてゆくこと。
それが、その約束の、何よりの証ではないでしょうか」
(小著『新・祈りのみち』の「婚儀のときの祈り」より)

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