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ストレス解消のために飲み始めたお酒ですが、やめることができません

中間管理職としての責任を背負うようになり、職場の人間関係などのストレスでむしゃくしゃして、つい居酒屋に立ち寄るようになったのですが、いつの間にか習慣になってしまいました。ときには記憶がなくなるほど酩酊(めいてい)して帰るために、このままでは身体を壊し、アルコール依存症になると妻からも小言を言われるのですが、意志が弱くてなかなかやめることができません。今では家に帰っても居場所がない状態です。

52歳男性・会社員

ストレスは「呼びかけ」。あなたには今、気づかなければならないことがあります

高橋佳子先生
『いま一番解決したいこと』より一部抜粋・要約

職場での人間関係が思わしくなく、むしゃくしゃして、ついお酒が飲みたくなった……。 最初は何気なく立ち寄った居酒屋だったのに、何度も何度も足を運ぶうちに、だんだんそれが日課のようになってしまった。やがてお酒の量も増えてゆき、妻から注意されたり、小言を言われたりすると、やり場のない気持ちをますますお酒に向けずにはいられなくなる……。ストレスから飲み始めたお酒がやめられなくなり、あなたにとって最初は安らぎの場所だった家庭までもが、ストレスをさらに増幅する場所になってしまっているという悪循環の中にいらっしゃるということでしょう。

悪循環の中にはまってしまった場合、多くは焦って、もがけばもがくほど、深みにはまっていってしまうものです。

それでも、一すじの希望があるのは、今、あなたの心の中に、「この自分を何とかしたい」という気持ちが芽生え始めていることです。「今のままではいけない。自分を建て直したい」、そのような意志があなたの中に立ち上ってきたからこそ、こうして質問を寄せてくださったのだと思います。そしてその想いこそ、今あなたが拠り所とすべき土台であり、あなたの本心なのではないでしょうか。今はかすかにしか感じられないかもしれませんが、そこにあなたを支える揺るぎない大地、立脚点があることを信じ、あなたの再生の歩みの起点としていただきたいと思うのです。


お酒を飲み始めたきっかけまで遡って考えてみたいと思います。

飲酒の習慣は、職場での人間関係などのストレスがきっかけとなって始まったわけですが、「ストレス」とは一般的には、例えばボールに圧力がかかると歪みが生じるように、人間関係や仕事の忙しさや不安などによって、心が外界からの圧力を感じている状態のことを言います。私たちの意志とは無関係に環境は常に変化し続けているわけですから、その意味では、人は誰でも大なり小なり、ストレスを受け続けて生きることになります。実際、サラリーマンを対象にしたある意識調査によると、30代後半、または係長、主任クラスの約60%が「仕事でストレスや疲れを感じたことがある」と回答したそうです。

またその一方で、ストレスは、生活に張りや快い緊張感を与えるという側面があるとも言われており、ストレスがなければよいというものでもないのです。ですからストレスがない状態をいたずらに求めるのではなく、大切なのは、過度なストレスを抱えたら、まずはそのストレスから逃げずに向かい合い、耳を澄ましてその「呼びかけ」を聴いてゆくことだと思います。

例えば、身体のどこかに不調があれば、「痛み」という形で身体は警報を発し、治療を施さなければならない部位があることを私たちに訴えてきます。その場合、私たちは病院に行って症状を伝え、原因となっている部位を見極めた上で、適切な治療を施すことになります。ただ痛みだけを和らげようとして、痛み止めという処置を施すだけでは、一時的な痛みの鎮静にしかならず、根本的な治療にはならないでしょう。

あなたの場合も同じだと思います。心が、「耐え切れないストレス」という形で警報を発しているときに、アルコールを飲むことは一時の気晴らしにはなっても、問題が根本的に解決されるわけではないことは、あなたがよくわかっておられることと思います。ストレスは「呼びかけ」――。「ストレス」という形であなたの心が呼びかけていることに、あなたが真正面から向き合わなければならない時が来ているということではないでしょうか。

ぜひとも心を澄まして、その声に耳を傾けていただきたいと思います。あなたご自身も、このままではいけないと思っていらっしゃるはずです。 きっと、その問題は厄介で、解決の方途がなかなか見出せないのでしょう。しかしこれまで、解決は難しいとあきらめたり、先延ばしにしてこられたとすれば、まだ真剣に正面から向き合ってはいないということでもあると思います。 等身大に職場の現実を見つめること、あなた自身がどう変わることができるかを中心にして、めざすべき未来を具体的に描いてみること……。解決に向けて一歩踏み出してみるなら、道が開かれる可能性はあると言えます。挑戦してみなければ、結果はわかりません。

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