#
# #
# LANG

時の羅針盤・175

時の羅針盤・175

結実する

高橋佳子


日本の四季

温帯の気候帯の中にあるわが国には、年間を通じて色彩豊かに変化する「四季」と呼ばれる季節があります。

日本の四季の特徴は、季節による寒暖の差が大きい点にあると言われています。つまり、それだけ、それぞれの季節の輪郭がはっきりしているということでしょう。

あたかも冬眠から目覚めるように生命が動き出し、芽吹き始める「春」。植物の多くが圧倒的な生長を果たし、繁茂する「夏」。暑さを過ぎ越して気温が下がり、木々が紅葉する「秋」。そして、寒さが厳しい「冬」……。

春夏秋冬──。

しかし、この日本の四季も、不変のものとは言えないようです。

今、世界では、気候変動が問題になっています。

わが国でも、地球温暖化の影響もあり、生態系の変化が見られます。以前は生息できなかった昆虫や海洋生物が頻繁に見かけられるようになっているのです。

今世紀の半ばには、わが国の大半が亜熱帯化するという予測もあり、私たちが深く親しんできた自然との関係も今後、ずっと同じというわけではないということでしょう。

ならば今、自然の四季に触れることができることは、本当に貴重な体験であるということではないでしょうか。

実りの秋に向き合う

その四季の中で、秋は「実りの季節」とも言います。

多くの作物が実を結び、収穫の時期を迎えます。実りというのは、一朝一夕には叶うことのない歩みの結晶です。

稲が収穫を迎えるには88もの手間がかかると言われるように、作物の多くは、様々な助力によって生長し、実りのときを迎えます。

「実り」とは、内なるものが、最高の形で外なる世界に現れ出ることです。つまり、その内なるものが、外なる世界に現れ出るためには、それだけのエネルギーが必要だということなのです。

そして、それは、人生においても変わりはありません。私たちが生きているこの現象界において、「実り」を得るということは、それだけのエネルギーの蓄積と圧縮が必要なのです。

今、実りの秋を迎えているならば、私たち自身も、1年の歩みの中での実りを意識してみることが大切ではないでしょうか。

あなたの1年の歩み──。その時間の中で、いかなるエネルギーの蓄積と圧縮がなされ、その結果、いかなる実り、いかなる結実がもたらされているでしょうか。

人生の四季──結実の季節

そして、これまでも幾度となく見つめてきたように、「魂の学」(*1)では、人生そのものを四季という季節になぞらえます。 夢や願い、ヴィジョンを探し求め、それに応えるための道を切り開く青年の世代──春。その願いやヴィジョンを具体的に実現しようと、エネルギーを注ぎ、蓄積する壮実年世代──夏。そして、その歩みの結晶化に向かう老年世代──秋。ここで人生は締めくくられるわけですが、それで魂の歩みは終わりではありません。

新たな人生を準備する実在界での期間──冬。この季節を経て、魂は再び、次なる人生の円環を回すことになるのです。

人間を永遠の生命を抱く魂の存在と受けとめる「魂の学」にとって、この四季という春夏秋冬の循環は、生き通しの生命の歩みを表すのに、実にふさわしいものです。

私たちの一生は、その1つの経巡り──。それを幾度も繰り返し、成長と進化を果たそうと願っているのが、私たちの魂です。

今、私たちがどの季節にいようと──人生の秋に身を置くならなおさら、私たちは、その結実の季節のことをもっと想い続ける必要があります。

私たちは誰もが、多くの助力と導きを与えられています。だからこそ、出会いと出来事を通じて、自らの内なる力を「最高の人生」に結実することに全力を注がなければならないのです。

2018.10.2

〈編集部註〉

*1 魂の学

人生を魂の次元から捉えるまなざしであり、人間の魂と世界を貫く真理=神理の体系のことを言います。形のある、目に見える世界を対象にしてきた「現象の学」に対して、形のない、見えない世界も含めた全体を扱います。
(著書『あなたが生まれてきた理由』13〜14ページより一部抜粋・要約)