#
# #

突然の事故に遭い、後遺症が苦しく、自分の運命を呪う気持ちが消えません

不慮の事故に遭い、足に痛みが残り、思うように歩けなくなりました。大好きな営業の仕事も辞めざるを得ず、「なぜ私がこんなことに……」と自分の運命を呪う気持ちが消えません。この先、どのように生きてゆけばいいのでしょうか?

47歳男性・無職

「試練は呼びかけ」という生き方によって、試練を引き受けて生きたとき、人生を通じて果たしたい願いに気づくことができます

金子祐介さん
スキージャンプコーチ
42歳 北海道

私は、スキージャンプの練習中、大事故に遭い、瀕死の状態に陥りました。奇跡的に一命を取り留めたものの、身体には深刻なダメージが残り、どん底の状態に──。

さらに、その試練を支えてくれた最愛の妻を病で亡くしました。

「自分は、運命に呪われているのか──」。そのような気持ちにもなりましたが、「試練は呼びかけ」という生き方によって、人生を通じて果たしたい願いを見出し、新たに歩み出すことができました。私の経験が、何かしらのヒントになれば幸いです。


私は、かつてスキージャンプの選手として、オリンピックに出ることを目標とし、日々練習に励み、「魂の学」を実践しながら、国内外の大会で優勝経験を重ねていました。

しかし、2005年の11月、フィンランド合宿の練習中のジャンプで、死線をさまよう大けがに見舞われたのです。飛行中にスキーが外れ、顔面から地面にたたきつけられ、頭蓋骨骨折、上下顎骨の複雑骨折、そのうえ、脳挫傷で意識不明、一時は心肺停止の瀕死の状態でした。現地では顎骨折の手術は施すことはできても、脳の治療は不可能──。そのため日本にチャーター機で搬送され、何とか手術を受けられたのです。

脳に著しいダメージを受けた私は、記憶喪失となり、事故時の記憶を完全に失っていたばかりか、一時は自分の名前さえわかりませんでした。そのうえ、言語能力など、生活に必要な諸能力も失っていたのです。

そこから、厳しいリハビリが始まりました。まっすぐ立つこともできない。歩くこともできない。言葉も自由にならない──。

ジャンプの仕方もトレーニング方法も思い出せず、後輩に聞くしかありませんでした。

今まで積み上げてきたものがすべてなくなり、ゼロになってしまった自分。

もう自分は終わっている。生きていたくない、死にたい──。


そんなどん底の中、高橋先生の著書『新・祈りのみち』を手に取り、「絶望するとき」の祈りを何度もなぞるように読みました。その中の「どんな状況にも最善の道が1つはあります」という言葉に、「本当なのか、本当なのか」と信じきれない気持ちをぶつけながらも、「もしかしたら、本当に最善の道が1つはあるかもしれない」と、婚約者の彼女や多くの人に支えられながら、リハビリを続けてゆきました。


そして、あの大事故から1年3カ月後の2007年、国体に参加、優勝することができ、復帰を果たせたのです。


しかし、その後、次なる試練が私を待ち受けていました。この間、ずっと私を全身全霊で支えてくれた彼女ががんを宣告されたのです。「自分は運命に呪われているのか──」。そんな気持ちが湧き上がりました。その後、結婚した私は、「今度は自分が妻を支える番だ」と必死で心を立て直し、ほどなく選手を引退。会社で働きながら、妻を懸命に看病しました。

しかし、闘病の末、とうとう妻は2012年に他界してしまったのです。

何よりも大切にしてきたスキージャンプと最愛の伴侶を失い、人生の中で堪えがたい試練に2度も直面した私。自分には、もう未来はない──。

打ちひしがれる中、私の魂は、慟哭し続けていました。


そんな私を支えてくれたのは、「魂の学」の「試練は呼びかけ」という生き方でした。

試練は人間に呼びかけているものがある。その試練を引き受け、それに応えて生きたとき、自分の願いに気づくことができる。試練は願いを明らかにしてくれる──。

虚無の淵で、「こんな人生を歩んだ自分だからこそ、できることがあるのではないか」「先に逝った妻の分まで、懸命に生きよう」、そう思えたのです。

この間の私と妻の歩みは、2013年、テレビのドキュメンタリー番組やドラマとなって放映され、多くの反響を頂き、それが講演の依頼につながってゆきました。今、私は、スキージャンプのコーチを勤めるかたわら、会社の協力を得て、講演活動を通して、子どもたちや若者、一般の大人の方々に、夢と目標と人生、自らが経験した人生の試練とその生き方――。「試練は呼びかけ」ということを伝えています。

そして、こうした機会を通じて、私は「人々を励ましたい。希望を感じていただきたい」と願っています。それは、私の人生が私に与えてくれた果たすべき仕事。これまでのすべての経験を抱いて、その願いの道を歩んでゆきたいと思っています。

同じテーマの記事をみる
病・障害・健康