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玄説 小栗判官
作・高橋佳子先生

死と再生、受難と救済。大いなる因縁の網の目に導かれて──。

【物語の紹介】
今を遡ること600年、あるいは700年とも伝え聞く、そんな昔々のこと――。
皇統が分裂し、鎌倉殿の支配が瓦解して、いずれは室町殿の世が訪れようかという時代。
それまで絶対に見えた権威が揺らぎ、鄙びた村々でさえ、人と人との関わりに貨幣が介在するようになって、人々は、ともかくも確かな力を、武勇に、財産に追い求めていった。
混沌の世――。ある者は這い上がり、ある者は転落していった。
ある者は徒党を組み、ある者は郡代となり、ある者は人々を使って商いを広げ、そしてまたある者は長者殿と呼ばれる成功者となっていった。
ある者は人買いに売られ、ある者は遊女に身をやつし、ある者は聖の教えを乞い、そしてまたある者は救いを求めて各地の霊場に旅をした。
そんな時代の只中で、京の都に生を受けた二条大納言の一人息子、常陸小栗――。
幼き頃より文武両道に秀で、帝の覚えもめでたく、ゆくゆくは左大臣、太政大臣にまで上り詰めるであろうと人々も噂していた。
それは自らの才能と努力の当然の結果――。小栗はそう信じて疑わなかった。そして、自らのように生きられぬ人々を愚かしく想い、いにしえのしきたりの数々を、時代に沿わぬ蒙昧な悪弊と切り捨て、自らの気の赴くままに振る舞っては、周囲を戸惑わせていたのだった。
しかし、それにもかかわらず、小栗はわからずにいた。実のところ自分は何をしたいのか、本当はどう生きたいと願っているのか――。否、分からないがゆえに、余計に、たえず目新しい何かを追い求めずにはいられぬ自分であることを、心のどこかで感じていたのだった。
ある日のこと――。常日頃から小栗を自らの出世の最大の障害と見なし、憎み、そして嫉妬していた右近中将が、とある噂を耳にする。小栗がご禁制の鳥獣を買い入れているというのだ。絶好の機会と見た右近中将は、宮中に「小栗に謀反の疑いあり」と触れ回り、その失脚を画策し始めた。
ひとたび官位剥奪・追放流罪の勅命が下ってしまっては、二条大納言家全体にその累が及んでしまう――。小栗は先手を打つべく、自ら常陸の国へと都落ちすることを決意。そして、その地で、自らを「小栗判官」と慕う屈強の者たちを従えて、いつの日か右近中将への復讐を果たすべく、その勢力を拡大していったのだった。
そんな中、小栗は、一人の女性と巡り合う。照手姫――。相模・武蔵両国を支配する郡代、横山大膳の一人娘であった。
互いに心惹かれてゆく小栗と照手。ただし、婚約にはまず親兄弟の許しを得なければならぬというのが関東武士の掟であった。
しかし、欲しいものはすべて自分の力で手に入れてきた小栗判官――。人に頭を下げることを良しとせず、横山一門の許しを得ないまま、照手と夫婦の誓いを交わしてしまう。
関東武士の面目を踏みにじられた大膳は激怒。小栗とその10人の重臣たちを、偽りの祝いの宴席に招き、その酒に毒を盛ろうと目論む。
それだけではない。照手についても、掟に背いたのに、我が娘であることを理由に無罪放免としては民の信頼を失うと、相模川に沈めてくるよう家来に命じるのだった。
果たして、小栗と照手の運命はいかに……。

ルネサンスアートシアター 2013年度作品
定価(本体5,741円+税)*約166分
★★ 研鑽用のみならず、一般の方にもぜひ御覧いただきたい内容

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