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時の羅針盤・205

時の羅針盤・205

生き直す

高橋佳子


4月は再び挑戦するとき

新しい年の扉を開いてから、早3カ月が過ぎました。桜の季節もすでに終わったという地域も少なくないでしょう。

新たな年度が始まり、新たな職場、新たな学校や学年に、気持ちを新たにしている方も大勢いらっしゃることと思います。

それだけではありません。新型コロナウイルス感染症のパンデミックに翻弄された昨年来、ありとあらゆる人間の活動が少なからぬ制約を受け、いかんともしがたい困難や障害を抱えるに至っています。この3カ月の中で、その影響を大きく受けた方もいらっしゃるでしょう。

そうした中にあって、年初に抱いた抱負、新たな年に抱いた願いに関する歩みはいかがでしょうか。年初の願いを大切にして順調に歩みを進めているという人もいれば、願いを抱いたものの、それに応えることができないまま月日が過ぎてしまったという人もいるでしょう。自分自身の中で、当初は大切にしたかった願いが曖昧になってしまったという人もいるかもしれません。

そうであるならば、年度の始まりである今月に、その願いをもう一度、思い出していただきたいのです。

今、自分に問いかけ、確かめても、「1年の始まりに抱いた抱負、願いは、やはり大切なものだった」、そう思えるなら、ここで改めて、その願いを取り戻し、歩み直すことに向かってはいかがでしょうか。

なぜなら、1年の中に置かれた4月は、2度目の始まり、もう一度始めることができる再起のときだからです。

一回生起の時の流れ

私たちが生きる世界は、二度と繰り返されることのない時の流れによって生み出されています。

私たちが日々向き合う出会いでも、出来事でも、一度起こってしまったものは、なかったことにすることはできません。その時の流れを逆行させることもできません。

どんなに財力や権力を持っていようと、どれほどの叡智(えいち)を蓄えようと、時の流れを巻き戻すことはできない──。

それは、この世界を貫く厳粛な理(ことわり)であり、法則なのです。

だからこそ、私たちは、1つ1つの出会いや出来事を大切にし、限りを尽くそうと思うのです。一期一会の心を持って、1人ひとりと出会い、1つ1つのものごとに後悔しないように全力を尽くすのです。

もちろん、どんなに心や力を尽くしたとしても、ものごとを思い通りにできるわけではなく、私たちはしばしば挫折や頓挫という現実に直面することになります。

巨大な国家的プロジェクトや企業の計画、職場での企画でも、また1人ひとりが心から願って始めたことでも同じです。その挫折や失敗を、多くの人々は取り返しのつかないことと受けとめるはずです。

いつでもどこからでも生き直すことができる

しかし、それは、「終わり」ではないのです。

私たちは、挫折の後でも、再起することができる。失敗したものごとに対しても、やり直すことができる。あきらめた人生でも、生き直すことができるのです。

考えてみるならば、私たちの世界は、一回生起の時の流れの中にある一方で、様々な繰り返しにも満ちています。

1日1日の繰り返し。1週間、ひと月、春夏秋冬、1年の繰り返し。そして、「魂の学」(*1)に親しむ人なら、そこに、私たちの人生自体の繰り返し、転生輪廻を含めないはずはありません。

その繰り返しこそ、私たちに再起を促し、生き直しを促すものではないでしょうか。

人生はいつでも、どこからでも、もう一度、挑戦することができる。もう一度、歩み直すことができる──。

その歩みを始めるのに、もう遅いということはありません。誰にもふさわしい生き直し方があるからです。

そのことを心に深く刻印して、今月、この再起の月を過ごしてみてはいかがでしょうか。

2021.03.26

〈編集部註〉

*1 魂の学

「魂の学」とは、見える次元と見えない次元を1つにつないで人間の生き方を求めてゆく理論と実践の体系です。物質的な次元を扱う科学を代表とする「現象の学」に対して、物質的な次元と、それを超える、見えない「心」と「魂」の次元も合わせて包括的に扱おうとするのが「魂の学」です。それは、私自身の人間の探究と多くの方々の人生の歩みから見出された法則であり、「魂・心・現実」に対する全体的なまなざしによって、人間を見つめ、あらゆるものごとに応えてゆくことを願うものです。
(著書『最高の人生のつくり方』50ページより引用)