時の羅針盤・182
時の羅針盤・182
心を育む
高橋佳子
十方世界を旅する人間
人間が人間である所以、それは、自由意志によって生きることができること──。自分の思い考えに従って生きることができるということです。
人は、自分が行きたいと思った場所を訪れることができます。日本国中どこでも、世界のどんなところでも、それが遠く離れた極地であろうと、太平洋上の孤島であろうと、自分が本当に望めば、行きたいところに赴くことができます。
私たちの人生自体、様々な場所と結びついているものです。誰もが、生まれ故郷を持っています。その故郷に愛着を感じている人もいない人も、その場所と結びついた記憶と経験を刻んでいます。居住する場所や仕事をする場所を変えるたびに、私たちは、その場所と結びついた人生の断片を積み重ねてゆくのです。
「十方世界」という言葉があります。仏教の言葉で、あらゆる方角を含んでいることから、「すべての世界」を指しています。私たちの人生が常にあらゆる場所とつながっていることを想うならば、人は十方世界を旅する存在と言えるのではないでしょうか。
大いなる心の道を歩む
しかし、私たち人間が生きているのは、外側の世界だけではありません。様々な場所を訪れてその時間を生きるだけではなく、外側の世界とはまったく異質な、内側の世界を生きている存在です。
それは、私たちが、内なる心の道を歩んでいるということです。
人はみな、気づいたときには誰もが人生の途上にあります。最初から、意識して人生をつくる人はいません。心のことも、何が心なのかも知らないところから人生を始めているはずです。
しかし、自分の人生を生きていると自覚してから、私たちは、心の道を歩み始めるのです。
そして、幸運にも心を育むことに導かれるならば、その歩みを進めることになるでしょう。
まず、心を発見することが、大きなマイルストーンです。自分の心が現実を生み出していることを知って、人生の現実と自分の心を結びつけることが最初のステップとなります。
そして、1度できてしまった心のはたらき──感じ・受けとめ・考え・行為の回路を、自ら耕し直し、育て直すことが次のステップです。
自分自身の感じ方、受けとめ方、思い考え方、行動の仕方がどうなっているのか。本当は、自分はどう感じ、どう受けとめ、どう考え、どう行動したいのか。自分の心の深くに息づく願いを具体的に生きるために、心をどう変革し、育ててゆけばよいのか……。
心は、長い年月をかけてつくりあげてきたものです。それだけに、それを紐解き、その歪みを修正し、心を組み直すことは、それだけの時間とエネルギーを必要とすることを忘れてはなりません。
重要なことは、心のはたらきを多くの束縛から解き放ち、歪みを少しずつ修正するに従って、私たちは、心の潜在力を取り戻すことができるということです。
私たちの心には、自分が考える以上の力が眠っています。その潜在力を引き出すことができるなら、私たちは、自らの魂が抱いている願いを生き、時代・社会の呼びかけを受けとめ、人生に託された使命に応える力を得ることができるのです。心の道は、だからこそ、大いなる道なのです。
セミナーの季節──心を育む
毎年5月から9月の間、GLA八ヶ岳いのちの里では、「青年塾セミナー」を皮切りに、「豊心大学セミナー」「フロンティアカレッジ・こころの看護学校合同セミナー」「かけ橋セミナー」「八ヶ岳伝道者研鑽セミナー」……と、様々なセミナーが開催されます。ぜひ、皆さんには、それぞれのセミナーを体験することをお勧めします。
なぜなら、神理=「魂の学」(*1)に基づくライフスタイルで過ごす2泊3日のセミナーは、いずれもが、心の道を深く歩むための時間を与えてくれるからです。心を育むことは、無手勝流ではかないません。宇宙の摂理、神理に沿った道こそが必要なのです。
2019.4.28
〈編集部註〉
*1 魂の学
「魂の学」とは、見える次元と見えない次元を1つにつないで人間の生き方を求めてゆく理論と実践の体系です。物質的な次元を扱う科学を代表とする「現象の学」に対して、物質的な次元と、それを超える、見えない「心」と「魂」の次元も合わせて包括的に扱おうとするのが「魂の学」です。それは、私自身の人間の探究と多くの方々の人生の歩みから見出された法則であり、「魂・心・現実」に対する全体的なまなざしによって、人間を見つめ、あらゆるものごとに応えてゆくことを願うものです。
(著書『最高の人生のつくり方』50ページより引用)