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時の羅針盤・253

時の羅針盤・253

共鳴する

高橋佳子


心と現実は一如

新たな年度が始まる今月、改めて気持ちを一新されている方は少なくないでしょう。

人生の現実は、私たちの心と分かちがたく結ばれています。では、心と現実は一如(いちにょ)、心と現実は1つとは、どういうことでしょうか。

それは、その両者はコインの表と裏のように切り離すことができず、一体であるということです。

Aという現実にはAの心があり、Bという現実にはBの心がある。Aの現実をBの心で生み出すことはできず、Bの現実をAの心で生み出すこともできません。

つまり、異なる心を抱けば、異なる現実を生み出すことになるということです。

だからこそ、心が変われば現実が変わる。そして、現実が変わったなら、そこには必ず、心が変わったという事実があるということです。

私たちが願いを抱き、青写真(*1)を描くとき、留意しなければならないことは、自分がどんな心を準備できるかということでしょう。

こんな現実を生み出したい。こういう状態を導きたい──。そう願うなら、それにふさわしい心を準備することです。それにふさわしい心をもてたとき、私たちは青写真を実現できるのです。

心は響きを放つ音叉である

青写真にふさわしい心をもつということは、どういうことでしょうか。

それは、私たちの心が青写真と共鳴するということです。青写真に共鳴し、宇宙自然の法則と一致するとき、私たちは、準備を整え、青写真の実現に向かっているのです。

青写真と共鳴すること──。その本質は、言葉にしがたいものです。そうしようと思っても、できることではありません。

でも、事態に託されている青写真を見出し、その素晴らしさに共感して心から実現を願うなら、そして宇宙自然の法則に一致する行動を積み重ねるなら、どうでしょう。「青写真に共鳴する準備は完全に整った」と言っても過言ではありません。

私たちは、四方に響きを放つ音叉(おんさ)のような存在です。1人ひとりの言葉や行動のエネルギーは、特定の周波数を抱きながら、周囲に広がってゆきます。

音叉を鳴らして、同じ周波数を抱く音叉を近づけると、共鳴が起こるように、同じ周波数を抱くものは、自ずから共鳴するのです。

同じように、私たちの側の準備が整い、青写真と同じ周波数になったとき、心は青写真に共鳴し、それを実現してゆく決定的な力を抱くのです。

共鳴の法則が未来をつくる

ものごとの青写真を実現しようとするとき、その青写真の本質に「共鳴する」ことがなければ、実現は叶いません。

「共鳴」と「共感」は似ていますが、同じではありません。意識的なものからより遠く離れ、自分の想いや考えなどの恣意(しい)的なものが除かれるのが共鳴です。それは、意識的な行動と言うよりも、「境地の伝播(でんぱ)」と言うべきものです。

青写真に共鳴したら、私たちはそのことを片時も忘れることなく、常に考えずにはいられなくなります。実現できる道を探し続けるようになるのです。

それは、青写真の実現のときだけではありません。誰かの発言を本当の意味で理解しようとするなら、その発言に「共鳴する」ことが絶対に必要です。

そして、神理の真髄を引き継ごうと志すなら、そこにも「共鳴する」ことが不可欠になるのです。

「共鳴する」状態なしに、何かを正確に生きることも、体得することも、伝承することも困難です。あらゆることがらの核心を本当の意味で理解し、吸収し、体現し、分有するためには、「共鳴する」という条件を欠くことができないのです。

これからの私たちの未来は、共鳴の法則を土台に切り開かれるべきものです。見せかけの流行ではなく、共鳴の原理によって、「魂の学」(*2)の生き方が広がってゆくことを願わずにはいられません。

2025.4.1

〈編集部註〉

*1 青写真

青写真とは、もともと建築や機械の設計図のことです。そこから転じて、ものごとの設計図、未来図を指すようになりました。私たちが実現することを求め、願っている現実の姿──。「魂の学」では、さらに、ものごとに秘められたイデア(理想形)、大いなる存在・神との約束という意味が込められています。
(著書『ゴールデンパス』136ページより引用)

*2 魂の学

「魂の学」とは、見える次元と見えない次元を1つにつないで人間の生き方を求めてゆく理論と実践の体系です。物質的な次元を扱う科学を代表とする「現象の学」に対して、物質的な次元と、それを超える、見えない「心」と「魂」の次元も合わせて包括的に扱おうとするのが「魂の学」です。それは、私自身の人間の探究と多くの方々の人生の歩みから見出された法則であり、「魂・心・現実」に対する全体的なまなざしによって、人間を見つめ、あらゆるものごとに応えてゆくことを願うものです。
(著書『最高の人生のつくり方』50ページより引用)