
時の羅針盤・252
時の羅針盤・252
「心の力」を知る
高橋佳子
心に対する誤った信念
4月に発刊させていただく新しい著作『心の力』を楽しみにしてくださっている会員の皆さんが大勢いらっしゃることと思います。
そこで、今月は、「心の力」の一端について、ご一緒に考えてみたいと思います。
GLAの会員の皆さんは、心の重要さについては、十分過ぎるほど受けとめられていると思います。しかし、一般の人々は、そこまで心の大切さについて受けとめているわけではありません。言葉ではその大切さを語っていたとしても、本当に切実なことと感じているわけではないと思えるのです。
多くの人々が心に対して抱いているイメージは、どのようなものでしょうか。
心は、捉えどころがなく、不確かなもの。心の中に生まれるイメージや想念、考えは、空気のように手でつかむことができない。それは、どんどん移り変わり、流れていってしまう、曖昧で、空虚なもの……。
いろいろなことを思ったり、考えたりするが、心ができることは、大したことではない。
心に思ったことが現実になることもあるが、それは、確実なものではなく、何かの加減でたまたまうまくいったもの……。
「およそ『心の力』とは、そのようなものだ」と思っている方は多いのではないでしょうか。
しかし、もちろん、そのような心の捉え方自体が誤った信念であることは、言うまでもありません。
心は同じ現実から正反対の結果を導くことができる
なぜなら、心は、私たちの想像を超えた驚くべき力を抱いているからです。
私たちの許(もと)に訪れる出会いや出来事、試練や問題、新たな課題や積み残してきたテーマ……。たとえそれらが同じような現実であっても、私たちの心次第で生まれてくる結果はまったく違ってしまいます。カオス(*1)としてやってくるその現実に心が触れた途端、正反対の結果が導き出されてしまうこともよくあることです。
私たちは、外界の情報をあるがままに受け取っているわけではありません。心が抱いている感情、思い込み、価値観、経験によって、現実を再構築しているのです。
たとえば、ひどく落ち込んでいるときは、周囲の状況を否定的、悲観的に捉えがちですし、逆に、気分が高揚しているときは、同じ状況を肯定的、楽観的に捉えてしまいます。
また、私たちの心には、無数の思い込みやバイアス(偏り)があります。自分の信じたい情報や期待する情報だけを強調して取り入れ、それに反する情報を無自覚に見逃してしまう「確認バイアス」や、自分の見方を絶対視し、他の人の事情を考慮することがむずかしい「自己中心性バイアス」など、私たちの思考に歪みがあれば、目の前の現実に対する対応も大きく歪んでしまうでしょう。
そこから引き出される可能性は大きく限定されてしまうばかりか、思わぬ暗転(*2)が導き出されても当然に思えてしまうほどです。
逆に、私たちがこうした感情や思考(思い込み)に支配されることなく、心が抱いている本来のはたらきを使うことができれば、どうでしょう。私たちは、目の前の現実から最大限の可能性を引き出すことができるようになります。そればかりか、驚天動地の起死回生の現実をも導くことが可能になるのです。
「心の力」を知る
ですから、より切実に私たちが抱いている「心の力」のことを考えてみていただきたいのです。さらに懸命に「心の力」を求めていただきたいのです。
私たちの内側には、本当に未来を光と闇に分けてしまう、鍵となる「心」が息づいています。「心の力」は、私たちの前に、デッドエンド(行き止まり)の窮地をつくり出すことも、希望に満ちた新天地を導くこともできる──。
「心の力」の真実を知ることで、私たちの人生には、必ず新しい道が開かれてゆきます。その道を、そしてそこにある様々な秘密を皆さんとご一緒に、ぜひ探求してゆきたいと思います。
2025.3.3
〈編集部註〉
*1 カオス
カオスとは、まだ何の形も輪郭もなく、結果も結論も出ていない、様々な可能性と制約、光と闇を内に秘めた混沌とした状態を指します。もともとギリシア神話の原初神カオスが、その言葉の由来です。カオスは、宇宙開闢の直前、すべての光と闇、無であると同時に一切の可能性を秘めたものと言える状態なのです。そして、それは、「マルかバツか」を超える生き方を必然的に導きます。
(著書『最高の人生のつくり方』167ページより一部抜粋・要約)
*2 暗転・光転
暗転とは、痛み・混乱・停滞・破壊といった闇の現実に転じること。光転とは、歓び・調和・活性・創造にあふれる光の現実に転じること。
(著書『1億総自己ベストの時代』156〜158ページより一部抜粋・要約)