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もう1人の自分
──「魂の賢者」を呼び覚ます

あなたの奥に、あなたも知らない「もう1人の自分」がいる

2024年の年初に起こった能登半島地震、羽田空港での航空機衝突事故。コロナ禍が終わっても、何が起こるかわからない「まさかの時代」は依然として続いています。
その中で、私たちにもっとも必要なことは、自らの内なる「もう1人の自分」を呼び覚ますこと――。なぜなら、「もう1人の自分」――「内なる賢者」は、あなたに無限の力と叡智を与え、いかなる試練や問題をも乗り越えさせてくれるからです。
本書は、どうすれば「もう1人の自分」を引き出すことができるのか、その方法が実際の事例を通して具体的にわかりやすく書かれています。

【目次】

プロローグ
第1章 もう1人の自分
第2章 魂としての自分
第3章 デフォルトモード
第4章 「賢者」と「破壊者」
第5章 「賢者」を呼び出す方法
第6章 時代と響き合う

プロローグより(一部抜粋)

先の見えない今、1人ひとりに何ができるか

 アフターコロナの日々が始まり、街に活気が戻(もど)って、多くの制約から自由になった私たち。しかし、目の前には、とても順調とは言えない混迷の現実が現れています。
 ロシア・ウクライナ戦争に続き、中東ではイスラエル・ハマス戦争が勃発。世界秩序は一層、安定を失い、経済を含めて様々な影響が懸念されています。
 わが国は、周辺国とのあつれきを恒常的に抱えています。北朝鮮の核・ミサイル開発、韓国との歴史認識の問題、福島第1原発の処理水放出に対する中国の反発と水産物の輸入禁止など、常に新たな問題が生じています。中国の影響で言えば、傍若無人の海洋進出や不動産バブル崩壊による景気低迷なども未来に影を落とす一因です。
 一方、国内では、人口減少・少子高齢化による国力の低下が指摘される中で、政策が右往左往するばかりか、政治資金の問題が噴出。政治不信を増幅しているのが現状です。
 そして、2024年の年初に能登半島地震、さらには羽田の航空機衝突事故が起こり、コロナパンデミック以降も「まさかの時代」は続いていることを改めて確認することになりました。
 こうした内憂外患を抱え、多くの人々が先の見えない現実に圧迫を感じているのではないでしょうか。
 加えて近年では、人間の能力を上回るAI(人工知能)の進歩によって、AIが人間社会を支配する懸念も囁かれ、未来は一層、不透明さを増しているのです。
 「これからどうなってゆくのだろう」
 「何が起こるかわからない。何を頼りに、何を拠りどころにすればよいのだろうか」
 「いったいどう生きてゆけばよいのだろうか」……
 もどかしい不透明感、そこはかとない限界感に、私たちはどのように立ち向かうことができるのでしょうか。
 どんな時代や社会にあっても、新たな未来を開くには、1人ひとりの側からアプローチしなければなりません。
 そのために、私たち自身が自分のもてる力を十全に発揮することが不可欠です。
 重要なことは、人間の力は、氷山のように、外に現れているものはごく一部で、大半は外には現れず、隠れているということです。

 水面上に現れている氷山が「いつもの自分」ならば、水面下に隠れている部分は、普段は意識することもない「もう1人の自分」──。
 だからこそ、私たちに必要なのは、内なる潜在力の象徴である「もう1人の自分」なのです。
 私たちは、今こそ、自らの内側に隠れている「もう1人の自分」を発見し、その力を引き出さなければなりません。
 しかし、そう言われても、「もう1人の自分って、いったい何?」。そう思われる方が少なくないのではないでしょうか。
 そこでまず、「もう1人の自分」を体験した方の話から始めたいと思います。

「もう1人の自分」というブレークスルーの鍵

 現在、埼玉県で重症心身障害児施設の施設長を務めている許斐博史さん。私が提唱する、人間を「魂・心・肉体」の存在として包括的に捉える「トータルライフ(TL)医療」の中核メンバーとして、30年にわたって一緒にその推進に尽力されているお1人です。
 許斐さんは、かつてハーバード大学医学部に留学し、その後、国立精神・神経医療研究センターの要職に就き、医学研究のエリートコースを歩んでいました。
 しかし、その後、突然、その栄光の道を投げ捨て、近隣の病院で1人の医師として働き始めます。それは、周囲の人たちもまったく理解できない、驚くような唐突な選択でした。いったい何がそうさせたのでしょうか。
 許斐さんは、多くの人が羨むような環境の中で、「何かが違う。自分がすべきことはほかにあるのではないか」と内心の疼きに衝き動かされるようになりました。
 医学研究は、病や生命の危機に対する根本的な解決をもたらす、かけがえのない取り組みです。しかし、その一方で、研究者の世界は熾烈な競争社会。人間の痛みに応えるというより、業績を上げることが優先され、そのための研究資金の獲得に血眼にならざるを得ない──。
 自分の研究が脚光を浴びれば浴びるほど、病に苦しんでいる人々との距離が遠くなってゆくように感じていたのです。
 やがて許斐さんは、自分の心の奥にある「痛みを抱える人々を直接救いたい」という、やむにやまれぬ想いに応えることを決心。臨床医の道を選んだのです。それは、許斐さんの中からもう1人の許斐さんが生まれたとしか言いようのない現実でした。
 心身に重い障がいのあるお子さんをもつことは、多くの家族にとって、途方に暮れるような困難を抱えることを意味します。子どもにとっても家族にとっても、人生を見失いかねない危機に直面するのです。
 その中で、障がいを抱える子どもを他と変わりない魂の存在として受けとめ、どこまでも可能性を信じて関わってくれる許斐さんのような医師の存在が、どれほどの支えとなるでしょうか。実際、許斐さんの施設では、子どもたちの様子が一変し、安定してゆくケースが跡を絶ちません。
 施設長となってから延べ10万人もの患者さんを診てこられた許斐さん。そのことによって、数多くのご家族の未来が変わることになったのです。
 また、弱気で引っ込み思案で、身体も弱く体力もないため、「無理、できない」が口癖だった広島県在住の主婦、大山敏恵さん。
 ある日、体調不良のため意識を失って駅のホームから転落。列車との接触で3・5リットルもの血液を失う大怪我を負い、生命の危機に見舞われてしまったのです。
 その瞬間、大山さんは、私が主宰するGLAで「魂の学」の研鑽を通じて学んだ「試練は呼びかけ」という言葉をつぶやき、試練に遭遇しながらそれを乗り越えていった多くの実践者の姿を心に蘇らせて、「さあ、自分の番だ!」と言い聞かせました。
 そして、足が車輪に挟まれたままの状態で、携帯電話を取り出し、家族やGLAの仲間に自分の状況を伝えました。その場にいた救急隊員の方は、「こんな事故現場で冷静に電話をする人を初めて見た」と驚かれたそうです。大山さんの中に隠れていた人間の力をブーストするスイッチが入ったのです。
 九死に一生を得たものの、大山さんは左足を失い、大きな不自由を抱えることになりました。まさに人生を潰しかねない大試練です。
 しかし、大山さんは、「これは、私の人生への呼びかけだ」と受けとめ、人生を振り返る中で、「私は、今まで何も挑戦してこなかった……」と思い至ったのです。
 以降、あらゆることに果敢に挑戦してゆきました。障害者スポーツ競技会で幾度も入賞し、大会新記録をマークするなど、日々、自己ベストを生きる明るく前向きな大山さんに変貌したのです。
 それだけではありません。かつて大山さんが事態を遠ざけ、当たらず障らずの関わりに終始していたため、バラバラになりがちだった家族も、絆を少しずつ取り戻してゆきました。心が通い合う夫婦になり、娘さんたちとも深い信頼を結ぶようになったのです。ご家族も「姿形は母ですが、中身はまったくの別人です」と語っています(許斐さん、大山さんの詳細は、拙著『未来は変えられる!』を参照)。
 このように、あるときから、それまでとはまったく別人のようになって人生を歩む人がいます。人生の途上で、試練に直面したり、特別な体験が起こったりしたことをきっかけに、新たな人生を歩み始める人がいます。
 かつてとはまったく異なる心のはたらき──感覚・感情・思考・意志をはたらかせ、新たな現実を切り開いてゆく。すべてが変わってしまうのです。
 考えてみれば、人生には試練や問題がつきものです。人間関係の行き詰まり。仕事の困難や挫折。家庭の問題や職場での試練。難局を打開したくても、どうすることもできずに立ち尽くしてしまう──。
 それらは、私たち自身が抱える限界です。そうした限界に直面し、呻吟した経験のある人は、決して少なくないでしょう。中には、人生そのものを失いかねないような限界に突き当たる人もいるのではないでしょうか。
 しかし、その限界を乗り越えさせ、壁の向こう側に運んでくれるものがあります。
 それこそが、「もう1人の自分」の存在なのです。
 私たちの中にいる「もう1人の自分」が、それまで抱えていた限界を、驚くべきやり方で突破させてくれます。「もう1人の自分」の誕生は、どうすることもできなかった限界を打ち破るブレークスルーの瞬間なのです。

私の「もう1人の自分」体験

 今回、『もう1人の自分』というタイトルの本を出版させていただいた理由──。それは、ほかならぬ私自身が、「もう1人の自分」の体験によって、人生を大きく変えてきた1人だからです。
 私にとって、「もう1人の自分」の体験は、一見、偶然の出来事のように見えて、実はそうではなく、人生の大いなる必然でした。
 私が最初に「もう1人の自分」に遭遇したのは、まだ5歳の頃。家族と出かけた帰路に突然具合が悪くなり、倒れてしまったときでした。
 近くの医院に運ばれた私は、周囲から見れば気を失ったようになっていましたが、いわゆる幽体離脱を起こして、身体の外から自分を眺めていたのです。
 ベッドに横たわった私の横で、医師と両親が心配そうに私を見ています。
 身体は動かないのに、意識は目覚めている状態でした。ベッドに横たわっている自分と目覚めている自分──。「もう1人の自分」を体験していたのです。
 さらに途中、私は、精妙な光のドームのような場所にいて、言葉にならない覚醒感と世界との一体感を体験していました。
 「そうそう、そうだった。そうだった」
 幼い自分には言葉にしがたかったことですが、普段の自分が知っていたことはごく一部分で、真実はそれをはるかに超えるもの──。その真実がすべて明らかになる場所があることを知ったのです。
 そして、身体を抜け出した「もう1人の自分」こそが本当の自分なのだという感覚は、余韻のように私の中に残り続けました。
 それ以降、新たなチャンネルが開いたかのように、様々なことが起こりました。
 感覚が鋭くなって、人の気持ちを手で触れるように感じ始めたり、風景や景色の見方が変わったりしましたが、周囲の理解を得られず孤立することもありました。
 異国のヴィジョンが見えたり、起こり得る未来の断片を感じたり、目には見えないはずの霊的な存在が毎夜現れたり……。
 初めての体験に怖れを感じることもありましたが、次第に慣れてゆきました。
 中学生の頃には、激しい雷雨をきっかけに自分の中から知らない言葉(異言:異言については、新約聖書『使徒言行録』の2章に「炎のような舌が分かれ分かれに現れ、1人ひとりの上にとどまった。すると一同は、聖霊に満たされ、〝霊”が語らせるままに、ほかの国々の言葉で話し出した」とあります)があふれ、父の導きで、心と魂が同通する道──霊道を開くことになりました。
 霊道を開いてから、私は「もう1人の自分」に語りかけるようになり、「もう1人の自分」も私にはたらきかけてくることが増えました。
 私は、「もう1人の自分」を新たな人生のガイドのように受けとめて、その言葉に大きな信頼を寄せていったのです。
 この歩みを進める中で、私が大切にしてきたこと──。それは、自分が向き合っている「もう1人の自分」が己心の魔や分裂した自己ではないことを、常に確かめるということです。「もう1人の自分」とは、私たちの本心につながる源であり、その存在と声は、私たちをより強く一貫させ、スッキリとさせてくれるものなのです。

2つのチャンネル──並行宇宙を生きていた

 私は、日常的な普通の感覚と、特別な感覚の2つを抱いて生きることになりました。昼と夜、家族や学校の友人たちと見えない世界の存在。あたかも異なる2つのチャンネルをもって、次元の異なる並行宇宙を経験するような感じだったのです。
 人々や街並みは、何も変わらない同じ世界に見えます。しかし、そこで起こっていること、使われる感覚はまったく別のもの。体験することは次元の異なることでした。
 そのような2つの宇宙を行き交いながら、私は、人間とはいかなる存在なのか、人生とはどういうものか、人として生きる道を探し求めてきたのです。
 友人たちや出会った人たちの様々な相談に乗ったり、近くの乳児院でボランティアとして子どもたちの世話をしたり、見えない霊たちが訴える無念の想いを受けとめたり、目の前に現れる問題の解決に心を尽くしたりしたことも、その一面です。
 小学校、中学校、高校と、たくさんの友人たちと出会い、様々な経験を積み重ねたことは、心躍る時間でした。机を並べて学んだことも、スポーツや武道で一緒に汗を流したことも、忘れることのできない思い出です。
 それでも、すべてを彼らと分かち合うことはかないませんでした。
 私は、自分が感じていることと、隣の友人たちが感じていることは、同じではないこともわかっていました。そして彼らが、私が感じていることをすべて理解するのはむずかしいだろうということもわかっていたのです。
 だからこそ私は、この2つの宇宙、日常的な感覚世界と超感覚世界を1つにつないで生きることを呼びかけられていたのです。
 それは、さらに言えば、内側だけの問題ではなく、私たちの内界と外界を本当の意味で確かにつなぐことであり、内なるリアリティを現実に反映させて生きることでした。そもそも、生きることは内と外をつなぐこと以外の何ものでもないのです。
 しかし、それがいかに困難なことであったか。なぜなら、そのもっとも基本的な「心と現実をどうつなぐか」ということさえ、私たちは誰も教えられたことがないからです。家庭でも学校でも、そのテーマと正対して教えられることはなく、自らが切り開かなければならない道だったのです。

(高橋佳子著『もう1人の自分──「魂の賢者」を呼び覚ます』より抜粋)

定価1,980円(税込)

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