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時の羅針盤・197

時の羅針盤・197

チェンジする

高橋佳子


新たな自分へのスイッチ

新型コロナウイルスの感染拡大によって、今年、私たちは共同体の活動に様々な制限を設けなければならなくなった一方で、その条件下だからこそできるインターネット配信のG.ライブによるテレ研鑽に取り組んできました。

拙著『自分を知る力』をテキストに、そして新たに作成されたガイドブックをサブテキストとして、2カ月間、1万6000名の会員の皆さんが研鑽された「自分を知るための『一日一葉』特別セミナー」は、まさにその挑戦です。

自宅や仕事場など、思い思いの場所で、毎日、少しずつ読書とともに、ガイドブックの袋綴じを開いて見開きの演習に取り組みながら、自分自身に向き合う──。それを2カ月にわたって積み重ねるセミナー。私も7回にわたって、発足会をはじめ、毎週水曜日の一斉研鑽で講義を重ねさせていただきました。

長らく「魂の学」(*1)を学び、自分の心に向き合ってきた方々にとっても、「『一日一葉』特別セミナー」での取り組みは、新鮮なものとなりました。

十分わかっているはずだった自分の煩悩についても、テキストを丁寧になぞる中で3つの回路の理解が深まったり、講義を通じてそこにはらまれている可能性を実感したり、新たな発見が生まれました。4つの受発色(*2)のタイプを連続して見つめることで、ベースとなる受発色のタイプだけでなく、他のタイプも含め、まさに「煩悩地図」(*3)が心の地図として自分の中に広がるのを実感されたのではないでしょうか。

新しい会員さんや学びの浅い皆さんにとっても、このセミナーは、2カ月の間集中して、「煩悩地図」を軸として神理の体系を一望することができた特別な研鑽であったことでしょう。

そして、自分自身の心について、「本当にこうなっている」と実感するだけでなく、心と現実が分かちがたく結びついていて、その心が変わることで現実が変わることを確かめることができました。

さらに、「魂の学」は人間や世界をどう受けとめ、人生をどのように捉えるのか、まず、魂の光闇と3つの「ち」(*4)の影響を受けて形づくられる煩悩によって、必然的に不自由を囲う「宿命の洞窟」から人生を始めなければならないことを学びました。しかしそこから、訪れる事態を「カオス」(*5)と受けとめ、自らの受発色をもって光転の現実を生み出してゆく歩みによって、「宿命の洞窟」を脱し、「運命の逆転」の次元を進むことができると受けとめることができたのです。

十分には理解できない部分があったとしても、「魂の学」を手触りのある、より身近なものにしていただけたのではないかと思います。

このセミナーを通じて、多くの方々に訪れた発見や実感は、新たな自分へのスイッチ──。それを証すのが、皆さんから届けられた感想でした。

継続が小さなチェンジを育てる

このような転機が、なぜ多くの方々から生まれてきたのか──。

それを後押ししたのは、2カ月の間、積み重ねられた歩みだったと私は思っています。毎日、少しずつでも、神理を携えながら自分と向き合い、心と現実の交流を見つめる時間を継続したことがいかに大切だったのかということです。

日々、神理に触れ、演習やモデルの方の歩みをなぞることを通じて生まれてきた発見や実感──。それは、小さなチェンジと言えるものです。

その小さなチェンジは、大切な種であったとしても、普通なら日常の流れの中に消えていってしまったかもしれません。様々な外からの要請や他のことへの関心に紛れて見失ってしまうような、頼りないもので終わっていたかもしれないのです。

しかし、毎日、ささやかに続けられた、神理と自分との対話を通じて、その小さな異変が確かな発見や実感に育ってゆきました。

今まで繰り返してきたものごとの受信・発信が変化し、今まで感じてきたものごとの捉え方や見え方が変わっていったのです。

そして、そのような小さなチェンジを積み重ねてゆく継続の中で、私たちは、新しい自分へのジャンプを果たすことができるのです。

新しい自分へのチェンジ、新たな生き方への小さなチェンジは、いつでも、どこでも始めることができます。大切なことは、それをどう継続してゆくかということなのです。

2020.07.22


〈編集部註〉

*1 魂の学

「魂の学」とは、見える次元と見えない次元を1つにつないで人間の生き方を求めてゆく理論と実践の体系です。物質的な次元を扱う科学を代表とする「現象の学」に対して、物質的な次元と、それを超える、見えない「心」と「魂」の次元も合わせて包括的に扱おうとするのが「魂の学」です。それは、私自身の人間の探究と多くの方々の人生の歩みから見出された法則であり、「魂・心・現実」に対する全体的なまなざしによって、人間を見つめ、あらゆるものごとに応えてゆくことを願うものです。
(著書『最高の人生のつくり方』50ページより引用)

*2 受発色

「受」とは、私たちが現実(外界)に生じた出来事を心(内界)に受けとめる受信のことで、「発」は、受信を受けて外界に関わってゆく発信のこと。「色」は仏教の言葉で、目に見える現実──人のことも含めて事件や出来事、外界のことを言います。人間は、生きている限り、この「受発色」のトライアングル(三角形)を回し続け、たとえ無自覚であったとしても現実を生み出し続けているのです。
(『神理の言葉2012』66〜67ページより一部抜粋・要約)

*3 煩悩地図

「煩悩」とは、もともと仏教の言葉で、人々の心身を煩わし、悩ませる一切の妄念のことを指します。「煩悩地図」では、人生を暗転させる「4つの煩悩」の傾向として捉えます。「4つの煩悩」とは、人間の「怒り」や「不満」に象徴される「苦・暴流(被害者)」の傾向、人間の中にある「怠惰」や人に対する盲目的な「依存心」に象徴される「快・衰退(幸福者)」の傾向、「恐怖」や「否定的想念」に象徴される「苦・衰退(卑下者)」の傾向、そして「欲望」や人に対する「支配」に象徴される「快・暴流(自信家)」の傾向のことです。
(著書『運命の方程式を解く本』105〜107ページより一部抜粋・要約)

*4 3つの「ち」

私たちが身を置く場所──それが地域であれ、職場であれ、業界であれ、そこには暗黙の前提、常識、価値観、そして生き方があります。そこで生きていれば、知らず知らずにその場の空気に深く染まってゆきます。それを私は、人間がその人生で必ず引き受けることになる3つの「ち」(血・地・知)と呼んできました。「血」は、両親や家族から流れ込む価値観や生き方。「地」は、地域や業界から流れ込む慣習や前提。そして、「知」は、時代・社会から流れ込む常識や知識、価値観。
(著書『最高の人生のつくり方』76ページより引用)

*5 カオス

カオスとは、まだ何の形も輪郭もなく、結果も結論も出ていない、様々な可能性と制約、光と闇を内に秘めた混沌とした状態を指します。もともとギリシア神話の原初神カオスが、その言葉の由来です。カオスは、宇宙開闢の直前、すべての光と闇、無であると同時に一切の可能性を秘めたものと言える状態なのです。そして、カオスということは、「マルかバツか」を超える生き方を必然的に導きます。
(著書『最高の人生のつくり方』167ページより一部抜粋・要約)