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時の羅針盤・193

時の羅針盤・193

光を生み出す

高橋佳子


時代を覆う暗雲

今、世界中が新型コロナウイルスの感染拡大との闘いに多大なエネルギーを注いでいます。この新たなウイルスは、専門医にも大きな困惑をもたらしています。臨床的なデータから、このウイルスは、これまでの医療的な常識からかけ離れた、実に捉えどころのない存在であることがわかってきたのです。

例えば、感染してから発症するまでの潜伏期間は、1〜24日と言われ、かなりバラバラです。また、感染しても、人によって発症しない人もいれば、命が脅かされるほどの重症に陥る人もいます。多くの人はそれほど深刻な状態にはならないものの、高齢者や糖尿病、心臓病、呼吸器の病、がんなどの基礎疾患を抱える人にとっては、重症化の可能性が高く、侮ることのできない病となっているのです。このように、罹患による影響もバラバラです。さらには、回復の仕方も、区切りとなる段階が不鮮明で、ダラダラと長引く人がいて、明らかな見通しをつけることがなかなかむずかしい……。

私たちが慣れ親しんでいる因果の法則に基づく「こうすれば、こうなる」という方程式がいずれも通用しないという、厄介な存在であることが明らかになりつつあるのです。

そして、実際の疾病としての被害のみならず、大きな懸念をもたらしているのが、2次的被害です。人々の行動の抑制が求められる中で、消費活動は低迷、株価も大きく下落し、経済的な停滞が甚大な影響をもたらしつつあります。

人類が直面するこの試練は、まさに時代を覆う暗雲と言えるでしょう。その暗雲垂れ込める下で、私たちはどう生きるのかと問われているのです。

それでも光を探す──カオス発想術

私たちは、この新型コロナウイルスがもたらす状況をカオスとして捉える必要があります。輪郭も形も捉えがたく、結果も結論も出ていない──。それは、まさにカオスとして私たちの前にあります。

そして、今こそ、「魂の学」 (*1) のカオス発想術をもって、この事態と真剣に向き合い、そのカオスの顔をつぶさに見つめなければなりません。なぜなら、どのような状況下にあっても、私たちは、そこから光を引き出さなければならないからです。

ただ不安に呑み込まれることなく、「まあ、大丈夫」と侮ることもなく、カオスのあるがままの姿、カオスが抱く光と闇、可能性と制約に肉薄する──。そうすることによってのみ、私たちは、このカオスから確かな可能性を引き出すことができるのです。

すでに会員の皆様にお伝えしている「5つの対策」は、そこから生まれてきた、命を守り、生活と人生、魂を守る生き方です。また、信頼できる医学雑誌 (*2) に掲載された論文のデータに基づいて、新型コロナウイルス診断のためのフローチャートを提案させていただきました。これも、会員を含む多くの人々を守る手立てです。

そして、集いの開催を控えている状況の中で始めることができた「G.ライブ」=インターネットライブ中継もまた、その歩みによって生み出すことができた、共同体の新たな研鑽の形であり、新たな絆の形にほかなりません。

菩提心の一燈を掲げて

私たちは、いかなる試練を前にしても、それをカオスと受けとめ、そこにある光を引き出してゆかなければなりません。どんなときも、光を求め、光を生み出してゆく──。それが、私たちの歩む道です。

今月8日は、GLAの51回目の創立記念日です。私たちは、昨年の50周年を経て、新たな50年の歩みを始めました。

創立記念日にちなんだ「善友の集い」 (*3) では、毎回、「菩薩の祈り」を捧げさせていただいています。それは、忍土の世界に菩薩として歩もうとする私たちの願いと志を託したものです。

菩薩という言葉は、仏教に源を持つものですが、それは、過去のものでも、仏教という枠にとどまるものでもありません。

菩薩とは、本当の自分を求め、他を想い、世界の調和に貢献しようとする存在──。その心を菩提心と言います。私たちは、暗雲垂れ込める時代にあっても、絶えず光を求め、光を生み出さんと生きる1人ひとりなのです。

2020.03.26

〈編集部註〉

*1 魂の学

「魂の学」とは、見える次元と見えない次元を1つにつないで人間の生き方を求めてゆく理論と実践の体系です。物質的な次元を扱う科学を代表とする「現象の学」に対して、物質的な次元と、それを超える、見えない「心」と「魂」の次元も合わせて包括的に扱おうとするのが「魂の学」です。それは、私自身の人間の探究と多くの方々の人生の歩みから見出された法則であり、「魂・心・現実」に対する全体的なまなざしによって、人間を見つめ、あらゆるものごとに応えてゆくことを願うものです。
(ご著書『最高の人生のつくり方』50ページより引用 )

*2 医学雑誌

『ニューイングランド・ジャーナルオブメディスン』(世界で最も権威ある医学雑誌の1つ)に掲載された論文「CDVID─19肺炎1099例の臨床的特徴」

*3 善友

仏教の祖師釈尊が「善友」の意義を問う弟子に対して、「善き友を得るとは、道のすべてにもあたることだ」と、その重要性を強調されたのが、その原点です。私たちにとっては、「魂の学」に基づいて、互いに縁となって成長進化を果たし、それぞれの使命に応えることを願う友人、仲間こそが、「善友」であると言えるでしょう。
(月刊『G.』2019年4月号「時の羅針盤181」6ページより引用)

※「2020善友の集い」開催延期のお知らせ

新型コロナウイルスの感染からお1人お1人をお守りするために、「2020善友の集い」は、開催日を4月5日(日)から、6月28日(日)に延期いたします(渋谷公会堂から全国の会場に中継)。