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時の羅針盤・256

時の羅針盤・256

未来に向かう

高橋佳子


光と闇の相克の中で

私たちは今、かつてない激動の時代を生きています。しかし、そのような変化の背後にあって、変わることなく連続しているテーマがあります。それは、「光と闇の相克(そうこく)」というテーマです。

人間の歴史には、多くの闇の痕跡(こんせき)があります。多くの戦争や差別と支配、幾多の犯罪の現実……。それらは、自然に生まれてきたものではなく、人間の「闇の心」によって生み出され、増幅し、繰り返されてきたものです。私たちは、この光と闇のせめぎ合いにおいて、常に光の側に与(くみ)し、光の陣地を広げることを志す1人ひとりでなければならないと思います。

そして、それは、未来をつくる子どもたちにとって、一層切実なテーマです。未来を生み出す子どもたちだからこそ、光の陣地を広げる確かな1人になってほしいと思うのです。

光の陣地を広げるために──『心の光を見つける12の物語』の願い

その未来のための一助として、今月、『心の光を見つける12の物語──親子で心を育てる3つのステップ』という新しい本を発刊させていただくことになりました。

この本はもともと、5歳ぐらいから小学校低学年までの子どもたちが、何とか神理(魂の学)に触れる機会をもつことはできないだろうかという親御さんたちの願いを受けて生まれた企画の1つです。特に現在、青年塾(*1)や「グローバル・ジェネシスプロジェクト(GGP)研鑽」(*2)で、「菩提心チャレンジ」(*3)が取り組まれている中にあって、「12の菩提心」(*4)=「12の光の心」が描かれた美しい絵と言葉に子どもたちが触れ、「光の心」を体験することができたら、どんなに素晴らしいでしょう。

しかし、そうだとするならば、私は、ただ単に、子どもたちが神理に触れるというだけではなく、この本を通じて、子どもたちが自らの中にある光と闇を実感したうえで、いつでも適切な「光の心」を呼び出せる「心の羅針盤」を育めるものにしたいと願ったのです。

そのため、本の全体を3つのパートに分けました。第1部は、「12の光の心」(12の菩提心)の絵と祈りの言葉に親しむパート。第2部は、それぞれの「光の心」についてお子さんたちに読み聞かせ、また一緒に読むことで、理解を深めてゆくパートです。第3部は、親子で一緒に「光の心」を実践し、まさに「心の羅針盤」をつくってゆくパートです。

特に第3部の「光の心」の実践ガイドの見開きページには、読み聞かせのポイント、親子での絵の見方、今すぐできる実践のヒントなど、親子で一緒に取り組み、感じたことを語り合う中で、子どもたちの中から「12の光の心」の1つ1つが呼び覚まされ、親子の新たな物語が生まれてゆく工夫がなされています。

「心の羅針盤」を育む

魂としての私たちは、地上に生まれ落ちるとき、3つの「ち」(*5)という人生の条件を引き受けて、使命を抱く人生の冒険を始めます。

人生の目的は、1人ひとりに託された使命の実現です。そのために私たちは人生を歩み始め、様々な試練に出会うのです。

そして、この新しい本は、1人ひとりが「12の光の心」(12の菩提心)を育み、その智慧と力を鍵として人生を創造することができるように導きます。

まず、「闇の心」から「光の心」への成長です。いじわるな気持ちやずるい考えが自分を動かそうとするとき、自分勝手な行動や楽をしてサボりたくなってしまうとき、「稲穂の心」や「川の心」「太陽の心」「火の心」などの「光の心」を育むことで、「闇の心」を乗り越えることができます。

さらには長じて、もっと困難な現実に直面したり、新たなテーマが呼びかけ(*6)とともに訪れたりしたとき、事態と呼吸するように、必要な「光の心」を呼び出して、その智慧と力を引き出して歩んでゆく──。

たとえば、「月の心」を身につけた人は、周囲にいる人たちをやさしく見守り、その人たちの光を見出す術(すべ)を得ることになります。また、「火の心」を引き出せた人は、どんなものごとに対しても、集中して完全燃焼できる智慧と力を発揮することができるようになります。

「12の光の心」を自らの内に育むとき、私たちは、あらゆる現実に対して、今、必要な「光の心」を呼び出し、未来を開くことができるようになる──そんな「心の羅針盤」マスターとなるのです。

2025.7.7

〈編集部註〉

*1 青年塾

青年世代は、進学や就職、結婚など、人生の中で最も変化が激しく、誰もが、悩みながら自分の道を模索してゆく世代です。毎年5月上旬に2泊3日で開催される「青年塾セミナー」は、そんな青年たちに、本当の願いを発見し、人生で果たすべき使命に向かって歩み出す確かな手がかりを与えてくれます(参加対象:中学生から35歳までのGLA会員)。

*2 グローバル・ジェネシスプロジェクト(GGP)研鑽

週1回、「魂の学」のフロント(最前線)の智慧を学びながら、プロジェクト活動(GLAでのボランティア活動)を通して、神理を体験的に理解できる、「研鑽」と「奉仕」が1つになった実践的な学びの場です。

*3 菩提心チャレンジ

GLA創立55周年を迎えた2024年、「グローバル・ジェネシスプロジェクト(GGP)研鑽」30年の歴史の上に開講された「第31次記念GGP」。年間テーマは「菩提心チャレンジ」。2025年も引き続き、「菩提心チャレンジ」が行われています。「菩提心チャレンジ」は、各自が菩提心を1つ定め、自らの内に菩提心を育み、その菩提心を抱いて、現実の課題や問題、試練に向き合い、具体的に新たな道を開いてゆく挑戦です。

*4 12の菩提心

「魂の学」では、「菩提心」とは、「本当の自らを求め、他を愛し、世界の調和に貢献する心」と定義しています。「菩提心」のすべてを言葉に尽くすことはできませんが、その響きと輝きを、以下の「12の菩提心」として表しています。「月の心」「火の心」「空の心」「山の心」「稲穂の心」「泉の心」「川の心」「大地の心」「観音の心」「風の心」「海の心」「太陽の心」。これら「12の菩提心」は、宇宙、自然に遍在する光の性質を、12の側面から捉えたものと言うこともできます。
(著書『12の菩提心』より一部抜粋・編集)

*5 3つの「ち」

私たちが身を置く場所──それが地域であれ、職場であれ、業界であれ、そこには暗黙の前提、常識、価値観、そして生き方があります。そこで生きていれば、知らず知らずにその場の空気に深く染まってゆきます。それを私は、人間がその人生で必ず引き受けることになる3つの「ち」(血・地・知)と呼んできました。「血」は、両親や家族から流れ込む価値観や生き方。「地」は、地域や業界から流れ込む慣習や前提。そして、「知」は、時代・社会から流れ込む常識や知識、価値観。
(著書『最高の人生のつくり方』76ページより引用)

*6 呼びかけ

1つ1つの出会いや出来事は、「偶然・たまたま」私たちの許にやってきたのではありません。それらは、必然があって、理由があって、意味があって、私たちのところにやってきたのです。このような魂の感覚を呼び起こし、魂の重心を抱くとき、私たちは、たとえ一見、ネガティブな事態であっても、「この出会い、この出来事は、私に何を呼びかけているのだろうか」と受けとめることができるようになります。そして、「私はどう変わることができるのだろう」と新たな生き方へと踏み出すことができるのです。
(著書『人生を取り戻す──「まさかの時代」を生き抜く力』47~49ページより引用)