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時の羅針盤・250

時の羅針盤・250

心を解き放つ

高橋佳子


新たな年の光を受けとめる

明けましておめでとうございます。

新しい年、2025年が私たちの前に開かれ、ここから新たな1年のサイクル(一巡り)が始まります。ぜひそれぞれの今に、かつてどこにも存在していなかった清新な空気が流れ込み、一切を新生させる光が注がれていることを想ってください。

あなた自身の現実も同じです。

今年、初めてのテーマに向かおうとする方も、昨年から引き続いて取り組む課題を抱えている方も、長年にわたってずっと解決できない問題を抱えて途方に暮れている方も、そこには必ず、ものごとを刷新する気が引き寄せられ、新たな流れが生まれようとしています。

すべてが一新される時が訪れているのです。

その新たな始まりを強く念じてください。

新しいサイクルを生きる重心を定める──心に正対する

私たちが生み出してゆく新たな現実、日々の流れ……等々、そのすべての中心にあるのは、私たちの心です。

私たちの心は、決して休むことがありません。日々、動き続け、やってくる形のないカオスに応え続けています。

カオスとは、まだ形も輪郭も名前もなく、結果も結論も出ていない混沌とした状態。私たちが経験する出会いと出来事、事態のすべてはカオスとして訪れます。

そのカオスに触れるのも、私たちの心であり、心から生まれる行動です。私たちの心と行動がカオスに触れた途端、光と闇、可能性と制約の混沌状態であるカオスは、結晶化し、光か闇か、どちらかの現実となって、私たちの前に現れるのです。

カオスと向き合い、その輪郭を決定するのも、私たちの心。人生の形を生み出すのも、世界の歴史を形づくる人間の足跡を決めるのも、私たちの心──。人間が関わるすべての現実を左右し、すべてを生み出すのが、私たちの内なる心なのです。

だからこそ、私たちは、心に向き合っていなければなりません。自らの心に正対して、正しく導く必要があるのです。

新しい1年の始まりとなる今なら、なおさらでしょう。

「心の力」を解き放つ

私たちの心は、誰のものであっても、大きな可能性を抱いているものです。心に秘められた力は、多くの人が想像する以上のものです。

それは、絶体絶命の危機や万事休すとしか言いようのないどん底の状況から、起死回生の逆転を果たすことができる力を抱いていると言ってもよいものです。そればかりか、宇宙と響き合い、響働して、1人の人間には到底果たし得ない奇跡のような歩みを刻むこともできるのです。

それは、拙著『もう1人の自分』に掲載させていただいた実践者の皆さんの足跡から想起できる「心の力」です。

しかし、どうでしょう。必ずしも自らの心からその可能性、大いなる「心の力」を引き出せるわけではないというのが私たち人間ではないでしょうか。

「心の力」を引き出せずにいるのは、私たちが心に歪(ゆが)みを抱えることによって、自ら内なる限界をつくり出してしまうからです。

強い信念やこだわりが心を束縛し、あるがままの現実を見させなくすることがあります。心に貼りついた、自分の常識や先入観、こだわりや思い込みが多くの制約を生み出してしまいます。

3つの「ち」(*1)は、私たちに人生を生きる力を与えてくれます。それがあるから、私たちは、世間を渡ることができるようになります。

しかし、同時に、3つの「ち」は、私たちに感じられないもの、見出せないものをつくり出し、絶対に行くことができない場所を生み出してしまうのです。

誤った信念、悪い意味でのこだわりや執着、独りよがりの常識、偏った先入観……等々、私たちは、そうした心の束縛を解き、心の自由を手に入れなければなりません。

人生の中でつくり出した限界を打ち砕いて、私たち自身の「心の力」を解き放つことが必要なのです。そのとき、私たちは、本当の意味でいきいきとした「心の力」を発揮できるようになるのです。

2025.1.1

〈編集部註〉

*1 3つの「ち」

私たちが身を置く場所──それが地域であれ、職場であれ、業界であれ、そこには暗黙の前提、常識、価値観、そして生き方があります。そこで生きていれば、知らず知らずにその場の空気に深く染まってゆきます。それを私は、人間がその人生で必ず引き受けることになる3つの「ち」(血・地・知)と呼んできました。「血」は、両親や家族から流れ込む価値観や生き方。「地」は、地域や業界から流れ込む慣習や前提。そして、「知」は、時代・社会から流れ込む常識や知識、価値観。
(著書『最高の人生のつくり方』76ページより引用)